元島根県民のお部屋

島根県の近代建築・近代化遺産と、路面モジュールのブログ

旧井尻村産業組合事務所(安来市井尻)

CIMG9433.jpg
元の伯太町井尻に残る、井尻村産業組合事務所の建物です。
※井尻村は昭和27年、安田村、母里村と合併して伯太村となっています。

この建物の存在は「写真アルバム松江・安来の昭和」や、
伯太町誌で、元の「井尻村農協」として確認していましたが、
築年などは資料が探せず、不明でした。

松陽
松陽新報(昭和9年4月18日)

松陽新報(山陰中央新報社の前身)の昭和9年4月18日付の紙面に、
「役場と産組事務所井尻村で竣工し十八日落成式挙ぐ」の見出しで、
新築なった産業組合事務所と村役場の写真が掲載されていました。

組合長の談話が掲載されており、一部を抜粋しますと、
「・・・如斯(かくのごとく)組合の発達に伴い事務所の狭隘を感じ
昨秋新築の工を起し去る三月経費約四千円で完成し・・・」
とあり、
この建物が昭和8年の秋に起工し昭和9年3月に完成したことがわかりました。

この紙面の下段には、井尻村役場・産業組合事務所落成記念の名刺広告が掲載されてあって、
その中に「無限責任井尻村信用販売購買利産組合」という名もあることから、
この産業組合の当時の正式な名称は、「無限責任井尻村信用販売購買利産組合」ということに
なるのではないかと思われます。

その他、記事の内容などから、この組合・建物の変遷をまとめます。

大正6年  井尻村信用組合
大正15年  井尻村信用販売購買利産組合?
昭和9年  事務所新築
昭和36年  井尻、赤屋、母里、安田の4農協が合併し、農協井尻支所

現在は手作り雑貨のお店が建物を利用しているようです。

図1
当時の写真を見ますと、2階部分は板張りで、アーチ状の窓が印象的です。
1階はモルタル?で、両端の柱部分には掲示板か
ショウウインドウのようなものがあったことがうかがえます。

現在の建物は2階部分のアーチは失われており、
板張りもトタンで覆われていて一見、戦後の建物のようにも見えてしまいます

図2
現在の建物でも、赤丸で囲った部分に
当時の意匠の名残をみることができます。

CIMG9436.jpg
建物側面に、事務所っぽい玄関が残されていました。
古写真をみると1階正面は完全に店舗風であり、
組合事務所への入り口は側面にあったのではないかと推察されます。

CIMG9435.jpg
改修の度合いが大きく、
一見して戦前の産業組合の建物だったとは思えませんが、
旧井尻村の歴史を考える上で貴重な近代建築と思います。

【建物のプロフィール】
竣工当時の建物名:井尻村産業組合事務所
竣工:昭和9年
構造:木造
設計者:長谷川治之助(長谷川工務所)
施工者:遠藤幸次

【撮影】 
平成26年9月

【参考文献】
松陽新報 昭和9年4月18日
能義郡誌郷土の光 昭和12年 能義郡刊行会
伯太町誌下巻 平成13年 伯太町誌編纂委員会
写真アルバム松江・安来の昭和 平成26年 いき出版

スポンサーサイト
  1. 2015/05/24(日) 23:06:19|
  2. 島根県の近代建築・安来市
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ