元島根県民のお部屋

島根県の近代建築・近代化遺産と、路面モジュールのブログ

浜田の洋風建築(浜田市)

浜田市内に残る洋風建築をご紹介します。
浜田は藩政時代以来の古い町であり、空襲なども受けていないので
古い町並みが残っていてもよいのですが、
道路の拡幅や空洞化による取り壊しなどで極めて
中途半端な町並みになっています。
その中にもわずかながら洋風の建物が残っています。

1
旧宮脇洋服店。
昭和2年築で、浜田市内に建てられた洋風建築の中でも、
もっとも古い部類に入るそうです。
現存建築としては最古なのかもしれません。

2
同じ建物の平成15年の様子。
上掲の写真は平成24年撮影ですから、
10年のうちにきれいに塗り替えられたことがわかります。
しばらくは安泰でありましょう。

3
看板建築風の川口屋は昭和4年築です。

4
3階建の建物で、3階部分はベランダ状の意匠です。

ご紹介できる現存建物はここまでです。

昭和4年の松陽新報に、
浜田の建築に関する興味深い記事がありました。

5
松陽新報(昭和4年9月7日付)

「平屋礼賛が亡び六十尺の高い家」
58年前の浜田地震でスッカリ平屋礼賛党が殖え、
震災復興当時の浜田は平屋建が大流行したものである。
その片影が今猶町内随所に見受けられ、
お年寄りの内には二階建に絶対反対を称えるものさえ
チョイチョイあると云う事だが、
時世はいつ迄もそうそう平屋礼賛を許さないので、
改築の都度二階建が増して行く。
殊に五六年この方三階建、四階建、
或いは露台までも設置した洋館建が急に、
沢山町並を抜きんでて天空へ高く聳え立つ様になって来た。
(中略)
この程新築した井上医院の如きは、
地上から屋上まで五十九尺八寸と云う延びようであって、
今の処町内随一の高い家屋である。
因みに平屋建で大きいのは旧郡役所と公会堂(旧藩主邸)、
又四階建は浪花食堂、洋館建で人目を惹くものは浪花食堂、
石州銀行、佐野呉服店、坂根商工会長邸、洗心閣、
宮脇洋服店、其他学校官公署等である。


「58年前の浜田地震」とは、明治5年に発生した大地震のことで、
この際に浜田の「畳ヶ浦」が隆起し、
温泉津では現在の薬師湯(当時の震湯)が湧くこととなりました。

当時の浜田町内においては民家の倒壊被害が著しく、
地震後の再建にあっては、地震の被害を教訓として、
軒の低い建物が増えたということを新聞記事では示しています。

本記事にて記される建物には現存するものもあります。
「公会堂(旧藩主邸)」とは以前ご紹介した「御便殿」でありましょう。
今回紹介した宮脇洋服店の名もあります。
四階建の「浪花食堂」は浜田大橋袂にあった洋風建築で、
当時のカフェーであったそうです。

6
松陽新報(昭和4年5月3日付)
他の日付の松陽新報に浪花食堂の写真がありました。

7
新聞に掲載されている写真は、
昭和4年に建設された「井上医院」であります。

「この程新築した井上医院の如きは、
地上から屋上まで五十九尺八寸(約18m)
と云う延びようであって、
今の処町内随一の高い家屋である。」

と、あります。

なかなか素敵なデザインの建物で、
低い建物が多かった町中では相当目立ったのではないでしょうか。
また、井上医院3階からの眺めも素晴らしかったものと思われます。

8
この井上医院、実は市内に現存していたのです。

9
3階部分が撤去され、円弧を描くファサードは
トタンで覆われてしまっていますが、原形はとどめています。

10
最初にこの建物を見た時には、
オリジナルな姿がさっぱりイメージできませんでしたが、
今回、新聞記事から建築当初の姿を見出すことができました。

11
浜田市役所駐車場からみた井上医院。
3階部分が失われた状態でも存在感抜群です。

こんな素敵なデザインだったのであれば、
復元してカフェなどに活用したら、
旧市内に観光客が呼べるのではと思いました。
が、今年になってグーグルマップで確認したら、
美事、更地になりたての風景が表示されてしまいました。



浜田市と云えば近年まで現役だった原井小、
長浜小の戦前築校舎を惜しげもなく解体し、
拙ブログでも紹介した「相生水源地」の建物も
最近になってきっちりと更地にしてしまいました。

祖先からの貴重な遺産を丹念に更地にしてゆく、
過去を振り返らない浜田市の確固たる姿勢には
感服するほかありません。

どんどん浜田から足が遠のきます。


【撮影】
平成15年3月(宮脇洋服店のみ)
平成24年9月

【参考文献】
松陽新報記事
「島根県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書」 平成14年 島根県教育委員会



スポンサーサイト
  1. 2016/02/20(土) 23:42:32|
  2. 島根県の近代建築・浜田市
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
次のページ