元島根県民のお部屋

島根県の近代建築・近代化遺産と、路面モジュールのブログ

旧和栗銀行本店(JAいずも知井宮支店)

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山陰本線西出雲駅の駅前に建つ、JAいずも知井宮支店の建物です。

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ここを列車で通るたびに、この一風変わった建物を気にはしていたのですが、
遠目に見ると最近建てられた「洋風な建築」にも見え、
今まで訪問することはありませんでした。

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「島根県の近代化遺産」のリストでは、
「大正2年頃の建築」とされ、「外装はモルタルに改装」とも記されています。
県内に現存する洋風建築の中でもかなり古い部類に属するのではないでしょうか。

モルタルでのっぺりとした感じになり、
窓もサッシ化されているため、ぱっと見では古さを感じませんが、
細部を見ると確かに古い建物であることが分かります。

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特に屋根の部分、屋根の形状やドーマーなどは
この建物がただものではないことを示しています。

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円柱で支えられた元は吹きさらしだった玄関部分には
自動扉がガラスをはめ込まれています。

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裏側はこのような感じです。


原形がどのような姿だったのか、大変興味を覚える建物です。



【平成25年1月追記】
昭和59年に出雲市農業協同組合から刊行された、
「出雲市農業共同組合史」より歴史関係をまとめます。

昭和18年 知井宮村、布智村が合併して神門村成立
昭和23年 神門村農協発足
昭和31年 神門村、出雲市と合併
昭和37年 農協、現在の神門支所へ事務所を移転
昭和38年 神門農協解散、出雲市農協と合併

また、昭和48年の「出雲市三十年誌」では
旧神門村の項にこの建物の写真が掲載されています。
そのキャプションは「明治風の屋根(現神門農協支所、元銀行建物)」とあります。
この写真ではすでに現在の姿と同じく、モルタル塗りになっているのがわかります。

以上のことから、
・以前は銀行として使用されていた
・昭和37年以降は農協の建物として使用されている
というところまでわかりました。

では、元銀行とは何銀行だったのか、ということですが、
現在西出雲駅の近くには山陰合同銀行知井宮出張所があります。

平成12年に刊行された「湖陵町誌」には、
明治45年(大正元年)時点での、簸川郡域の会社一覧表が掲載されていました。
知井宮関係の銀行が2行記載されていました。
・合資会社山本銀行(明治41年創業)
・合資会社沼知銀行(創業?)

以上のことから、この建物はもともと地元で創業した銀行の
本店として建築され、その後の銀行の再編で山陰合銀の支店となり、
その支店の移転後農協が入居した・・・などということも推察されます。
その辺りについては今後調べてゆきたいと思います。


【平成26年5月追記】

「郷土誌神門」の「和栗銀行」の項に、次のような記述がありました。
「その後、本店を知井宮駅前に新築し・・・」

さらに上記文章の後ろに次のような注釈がありました。
『同行の跡は神門村役場→出雲市神門支所→農協知井宮支店』

以上の事から、この建物は当初、「和栗銀行本店」として建築されたことがわかりました。
和栗銀行は大正2年7月に設立され、同年10月に開業しています。
「その後本店を知井宮駅前に新築」しておりますので、
この建物の築は大正2年以降となります。
そして、和栗銀行は大正10年に、同じく神門で開業していた
山本銀行(創業者は和栗銀行創業者と同族)と合併した後、
大正14年には雲陽銀行と合併して雲陽実業銀行となり解散しました。

以上の事から、和栗銀行本店の建築年は、
銀行が開業した大正2年以降、銀行が解散する大正14年以前。
というところまで絞ることができるかと思います。

いずれにしても、大正年間に建築された地方資本の中小銀行の本店が
現存しているという点で大変貴重な建物であることには間違いありません。

※平成25年追記の際、知井宮で開設された銀行として「沼知銀行」を挙げています。
 沼知銀行は元々は明治30年に茨城で設立された銀行のようで、
 和栗銀行設立の際に「銀行設立の権利を買う」くらいの意味合いで利用されたようです。
 

【平成27年1月追記】
「山陰合同銀行五十年史」の「和栗銀行」の項に、次のような記述を見つけました。
「(大正)3年2月、知井宮駅前に本店を新築し、
島根県知事らを迎えて盛大な新築移転開業式を行った。」


ああ、ついに建築年までたどり着くことができました。
この建物は大正3年に建てられた、旧和栗銀行本店です。


改めて経歴をまとめてみます(赤字が建物の経緯)。

大正2年:和栗銀行開業
大正3年:和栗銀行本店として竣工
大正14年:和栗銀行解散
時期不明:知井宮村役場となる?
昭和18年 知井宮村、布智村が合併して神門村成立
時期不明:神門村役場となる
昭和23年:神門村農協発足
昭和31年:神門村が出雲市と合併
時期不明:出雲市役所神門支所となる
昭和37年:神門農協事務所となる

昭和38年 神門農協解散、出雲市農協と合併、出雲市農協知井宮支店となる
現在:JAいずも知井宮支店



【撮影】 平成24年9月

【参考文献】
出雲市三十年誌 (昭和48年 出雲市)
出雲市農業協同組合史 (昭和59年 出雲市農業協同組合)
山陰合同銀行五十年史 平成4年 山陰合同銀行
郷土誌神門 (平成9年 郷土誌神門編集委員会) 
湖陵町誌 (平成12年 湖陵町)
銀行変遷史データベース」 全国銀行協会



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