元島根県民のお部屋

島根県の近代建築・近代化遺産と、路面モジュールのブログ

旧内田小学校講堂(美郷町内田)

「写真アルバム 石見の昭和」という写真集を眺めていたところ、
「旧内田小学校の講堂は現在、君谷保育所になっている」という記述を見つけました。

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島根県の近代化遺産リストには記載がありませんが、
いろいろネットで調べてみましたところ、
現在も君谷保育所として現存していることがわかり、
平成25年の9月に訪問を果たしました。

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内田小学校は昭和44年に近隣の地頭所小学校と合併し君谷小学校となっています。
合併後の君谷小学校は旧君谷中学校の校舎を使用しました。
旧内田小学校はずっと保育所として活用されてきたようです。


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現在空き地になっている画像手前部分、講堂の左側に
平屋・押縁下見板張の質素な校舎がありました。
校舎と講堂は建物としてつながっておらず、渡り廊下で連絡していたようです。

邑智町誌によると内田小学校は大正8年に校舎を新築しています。
現在、その校舎は現存していませんが、
昭和53年に刊行された邑智町誌に掲載されている写真の中で、
この講堂と校舎とが「君谷保育所」として説明されておりますので
昭和50年代までは残されていたようです。

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おしゃれです。

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出入り口の庇のデザインが特徴的です。

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県道から見える講堂。内田の集落の少し高いところに位置します。

さて、この講堂の建築年ですが、校舎は大正8年の築でも、
講堂はもっと後年の建築ではなかったかと思われます。

質素な校舎は確かに大正年間のデザインのように思うのですが、
講堂のデザインが校舎とあまりにも差があります。
同時期に建てられたのであれば後者と同様な
もっと地味なデザインになっていたのではないかと思われます。

例えば、匹見町に残る旧匹見小学校講堂の場合でも、
校舎が大正7年地区の押縁下見板張であるのに対して、
講堂は昭和9年築のおしゃれな洋風建築となっています。

また、校舎から独立して建っているのも、
同時期に建てられたとしたら不自然です。

もっと邑智町誌で詳しく書いていただけたら
こんなに悩む必要はないのですが。。。


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もう一つ気になったのは講堂出入り口の庇です。

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以前ご紹介した江津の波積小学校講堂のそれとそっくりです。


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2つの講堂を比べてみますと、
庇だけでなく窓まわりの建具のデザインや、
窓の配置なども非常に似ているように思えます。


波積小学校講堂と内田小学校講堂とのデザイン的な類似は、施工業者が同じだったとか、
あるいは設計図を流用したなどの何らかの関連があることを示唆しているのではないでしょうか。

例えば、江津市の跡市小学校(昭和13年築)は浜田市の旧原井小学校(昭和8年築 現存せず)
とは施工業者が同じだったため、校舎正面のアーチなど、デザインの類似点が認められます。

昭和9年10月に県から市町村あてに出された「県報」、
「市町村立學校建築ニ關スル件」※では、既存校舎の改築・改修の推進や、
改築・改修時の施工管理、建物の補強基準などが細かく規定され、
「學校校舎建築標準設計圖」も定められています(設計図は未確認)。

この県報は、度重なる風水害、特に昭和9年9月の室戸台風で島根県下の学校は大きな被害を受けており、
それを踏まえ、防災の観点から学校校舎の堅牢化をもって児童を守ろうという趣旨があったようですが、
ここで注目したいのが校舎の「標準設計図」なるもので、「標準」というくらいですから、
昭和9年以降、島根県内では標準設計図に基づいて校舎や講堂が建てられたケースが
かなりあったのではないかと思いますし、
この「標準設計図」が、昭和9年以降の島根県下の学校建築デザインに、
どの程度影響を与えることになったのか、大変興味を覚えるものであります。

そのような中で、県報が出たのが昭和9年10月26日、波積小学校講堂が竣工したのが昭和9年12月、
ということで、県報が出てから波積小学校の講堂が竣工するまでの間、
1ヶ月強しかありませんので影響はなかったのかもしれませんが、
あるいは何らかの影響を受けた可能性も無くはないかもしれません。

多少強引ではありますが、
内田小学校の講堂は昭和9年に建築された波積小学校講堂にそのデザインが似ており、
また、波積小学校建設の時期に島根県では学校建築の標準設計図が定められていることから、
施工業者が同じであったか、あるいは標準設計図に影響を受けていたか
(その結果として波積小学校と同じようなデザインになった)の、
どちらか(あるいはどちらも)の可能性があるのではないかと推察するところです。

以上のことから旧内田小学校講堂の建築年は昭和9年か、
それ以降ということになるのではないかと思われます。
(素人の推論なので間違えていたらすみません)

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なぜか近代化遺産リストから漏れてしまった旧内田小学校講堂ですが、
美郷町ではほとんど唯一の貴重な戦前築の木造校舎はずで、
これからも保育所として長く活用されればと思います。


【撮影】 
平成25年9月

【参考文献】
写真アルバム 石見の昭和 平成24年 いき出版
邑智町誌下巻 昭和53年 邑智町企画課
島根県近代教育史 第2巻(学校建築の変革) 昭和52年 島根県教育庁総務課
島根県近代教育史 第5巻(県報) 昭和54年 島根県教育庁総務課 
石見潟第25号 平成21年 江津市文化財研究会 


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