元島根県民のお部屋

島根県の近代建築・近代化遺産と、路面モジュールのブログ

旧吉田信用購買販売利用組合事務所(雲南市吉田町)

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旧吉田村の中心である吉田の町はメインストリートのなだらかな坂の通りに沿って、
田部家の土蔵群をはじめとした歴史的な街並みが形成されており、
たたら製鉄でにぎわった近世・近代の面影を現在に伝えています。

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今回ご紹介する「旧吉田信用購買販売利用組合事務所」は、
そんな歴史的な街並みの一角にあって洋風の意匠が町並みに彩をそえる素敵な近代建築です。

この建物は、昭和6年*に吉田村の産業組合の事務所として建てられたもので、
現在も旧吉田村地域の商工会館として利用されているようです。
「新版日本近代建築総覧」によれば、設計は秋鹿隆一郎とされています。

*建築年についての考察は後述

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玄関周りの意匠。

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木造二階建てで、当時の洋風建築としては標準的なサイズと見受けられますが、
一階部分の窓の高さがかなり低く抑えられており、
その分、一階窓と二階窓との間の飾り板が縦に長過ぎる感じがあり、
やや全体のバランスが悪いような気もしないでもありません。

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飾り板の意匠などは、後年秋鹿隆一が設計した、有福小学校の校舎にも似たデザインです。

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建物の裏側。

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建物正面向かって左側には後年のものと思われる増築部分がありました。
二階窓は左右対称になっていますが、左端の窓下の飾り板部分は半分くらいで切られており、
何らかの改装が後年なされた可能性もあるかと思われます。


【建築年に関する考察】

建築年については、前述の「新版日本近代建築総覧」のリストでは昭和6年とされていますが、
その後、平成14年に島根県教育委員会から出された「島根の近代化遺産」によるリストでは、
「昭和7年頃」と記載されています。

旧𠮷田村については村誌が刊行されていないため、
近現代の吉田村の動きを体系的に追うことができません。

しかし、当該信用組合事務所については幸いなことに、
戦前に刊行された「島根県飯石郡𠮷田村誌資料第2輯」という資料に、
建設当時の状況に関する記述が残されていました。少し長いですが引用します。

島根県飯石郡𠮷田村誌資料第2輯(昭和11年版) 愛郷会編輯部編
77.無限責任吉田信用購買販売利用組合の沿革

昭和6年
・事務所狭隘なるを以て新築することに決し9月4日吉田町1576番地堀江稲行氏宅を仮事務所として移転す
・9月10日事務所新築地鎮祭を行う

昭和7年
・事務所新築略ぼ完成したるを以て請負者より仮受取をなし1月4日新事務所に移転す
・本館 間口8間奥行6間(二階建)建坪48坪
・倉庫 間口7間奥行2間半(平屋)建坪16坪5合
此惣工費 4600円也
工事請負者 吉田村職工会
・(4月21日)事務所新築落成祝賀会兼25周年記念式を開催す


いかがなものでしょうか、事務所がほぼ完成したので、昭和7年1月4日に新築事務所に移転したとあります。
なんと微妙な時期に完成したのでしょう。
これは「島根の近代化遺産」が建築年を「昭和7年頃」とした気持ちも何となくわかるような気がいたします。

1月4日に移転ということは、さすがに三が日に作業をしていたとは考えにくいですから、
昭和6年の暮れにはおおむね出来上がっていて、正月過ぎてから仕事始め?の4日に
移転しようということになったものなのではないでしょうか。

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外装もきれいに保たれていて大切にされていることが分かります。
せっかくなのでカフェや町並み資料館のような形で観光客にも開放していただけると、
吉田の町歩きの魅力も増すのではないかと思います。

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こういう風景を見ていると島根に行きたくなります。



【建物のプロフィール】
昔の建物名:旧吉田信用購買販売利用組合事務所
現在の建物名:吉田村商工会館
竣工:昭和6年
構造:木造2階建
設計者:秋鹿隆一
施工者:吉田村職工会

【参考文献】
島根県飯石郡𠮷田村誌資料第2輯 昭和11年 愛郷会編輯部編
新版日本近代建築総覧 昭和58年 日本建築学会
島根県の近代化遺産 平成14年 島根県教育委員会

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